旧 清泉拝中 Old School Band


スパルタンな彼女(スカイラインGTR)GT浪漫三部作

2013年07月06日 19:34

スパルタンな彼女


  5年は、長い!いきなり電話で空港に向かいに来いと・・・・ってか。

 自信もほどほどにしろ!その一点の曇りもない僕への自信は何処から来るんだ?

 日本支部からニューヨークのU・N・C・L・E本部へ派遣され5年間電話1つなかったじゃないか・・・・。
  成田空港で彼女を乗せ東京へ向かう。

 少し痩せたのか、それとも垢抜けたのか?、5年ぶりの彼女は日本人には見えなかった。

 一言も話す事無く僕のハコスカ2000GTRは、湾岸線からレインボー・ブリッジに入った。
 昭和45年製の「日産スカイライン2000GTR」!羊の皮を被った狼、通称ハコスカGTR、S20のエンジンにウェーバー3連キャブ、四輪独立サスペンションをシャコタンにしてハの字    型にカッコ付けしている。

 熱線もエアコンも省いたスパルタンな走り、エキゾースト・ノートはまさに完璧だ! 

   彼女は、相変わらず車窓から夜景に目を落とし黙っている。

 僕は、段々と血が上り始めて来た。いい加減してくれ、5年ぶりにいきなり呼び出し、成田まで迎えに来いだ!そして黙りか・・・・。
 レインボー・ブリッジを抜け、直進からの右カーブだ!僕は、4速から3速に落としエンジン・ブレーキをかけ減速を図る。同時にダブル・クラッチでエンジンの回転数を下げずに、ヒール&トゥーでブレーキをかけた!エンジンの回転数は4300回転を保ったままカーブを走り抜けている!綺麗に決まった♪ファイヤー・ストーンのタイヤもシッカリと吸い付いている、完璧だ。
 右カーブを曲がりながら、僕は左目でチラッと彼女を見た。
   泣いている・・・・それも、ボロボロと、なぜ?・・・・。
   ハコスカGTRは、グウォン!ウォン!ウォン!とケタマシイ音を立てて右カーブを走り抜けようとしていた! 
 その時、その時だ!! ハコスカGTRの横をHONDAの軽自動車がスーッと追い越して行った。

 オー!NO!!
   泣いていた彼女が笑った。大声で、お腹を抱えて!
  「 FEN.radio」からは、ミキ&レイのリメイク、「この世の果てまで」♪が流れた♪♪♪・・・・。
 彼女がやっと話し始める。「これ、この世の果てまで♪よね。5年前も丁度このカーブで流れたのよ。覚えてる?キャリアアップの渡米に最後まで理解を求めた私にあなた、 ずっと無言で成田まで・・・・この世の果てまで送ってくれたのよ。」 

   今度はクスクスと笑っている。

 僕は、ラジオを消し・・・・「実は、スペイン料理の店、予約してるんだ。」とぶっきらぼうに彼女へ伝えた。

 次の神田で首都高速を降りようとウィンカーを出した時、彼女は僕の左足を蹴った、「痛エッ!」、彼女は再び車窓に目を向け髪をかき上げた。

 その仕草は、まるで映画「男と女」のアヌーク・エーメのようだった。

 そして、スカートからこぼれ見えた彼女の右足は、とても素敵だった。スパルタンな彼女・・・・。


 

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