旧 清泉拝中 Old School Band
ドラム担当 チッチのお薦めは、ジョン・コルトレーンの「Ballads」
中学生の頃からフォークソングばかり聴いていた私が、初めてジャズに出会ったのは、高校卒業後に大学資金を貯めるために始めたバイト先でした。
吉祥寺の「More」。会話禁止の本格的なジャズ喫茶で、リクエストのLPレコードをかけるお店。私が最初に受けたリクエストがジョン・コルトレーンの「Ballads」。1000枚近くあるアルバムの中から必死に探してかけた一枚。ジャズを知らない私の心にもしみじみと響いて感動したのを鮮明に覚えています。
そして、昼間バイトしていた国分寺の喫茶店近くにあった「長靴をはいた猫」というジャズとお酒のお店。私が初めてジャズライブを経験したお店です。
そこは、まだ小説家として世に出る前の村上春樹さんがご夫婦で経営されていたお店。カウンターの中で物静かに微笑んでいた春樹マスターの写真が、数年後、アメリカに居た私がたまたま読んでいた日本の雑誌の中に。「なんでマスターが??」とびっくり!直木賞受賞作家としてインタビューを受けていたのです。
そう言えば、ジャズが流れるカウンターの向こう側で、春樹マスターが「小説はまず英語で書いている」と言っていたのを思い出しました。
吉祥寺でバイトを始めてから数ヶ月、時代は変わり、吉祥寺のジャズ人気店の多くが、4ビートのジャズからクロスオーバーへと、そして会話禁止から、楽しくお酒を飲むお店へと変わって行きました。
「More」の寺島マスターが新規開店し、私が毎日12時間働いていた「Scratch」 や伊織マスターの「Sometime」を始めとして、当時人気の「音楽とお酒」のお店が、女性誌モアやプレイボーイといった雑誌の取材を受けたりと華やかな街に。それでも、様々なLPレコードの中から、雰囲気や顧客に合わせて選曲し、変わらずに音楽が主役だったのは確か。
20才で渡米するまでの2年間、ジョン・コルトレーンの「Ballads」から始まって素敵な音楽と出会い。今思えば、マスターこだわりのスピーカーから流れる心に響く名曲との毎日は2度と体験出来ない、私の宝物です。
音楽って、素晴らしい。
※1『バラード』(Ballads)は、ジョン・コルトレーンがインパルス!レコードから1962年に発表した全曲バラードのアルバムです。
- ジョン・コルトレーン - テナー・サックス
- マッコイ・タイナー - ピアノ
- ジミー・ギャリソン - ベース
- エルヴィン・ジョーンズ - ドラム
- レジー・ワークマン - ベース(on 7.)